ノノエル
- 2023年6月8日公開
紹介
「ノノエルは愚かな神だった」
暗い短編です。死の表現を含みます。
本編
ノノエルは愚かな神だった。神として大成するための修行を放棄して、小さな世界を作ることに没頭していた。いつか創造神の一柱として認められたい。そんな夢ばかり追っていた。
ノノエルに創造神としての才能はなかった。それでも小さな世界を作り続けた。修行から逃れ続けた心身は堕落し、気付けば修行に必要な力すら失っていた。そんなノノエルに太母神は怒り、作りかけの小さな世界を一瞥すると「そんなものは価値にもならない」と喝破した。
ノノエルは苦しんだ。そして自暴自棄になった。自分が作る世界に価値はない。自分が創造神として認められることはない。自分が存在する意味はない。脳裏に渦巻いていた不安が滝となって溢れていた。
ノノエルは最後まで愚かな神だった。彼女は小さな世界に分身を作ると、永く冷たい眠りについた。分身は悲しい気持ちのまま目覚めた。いつか破壊神の一柱として全てを壊す。そんな誓いを立てていた。